マスターの称号

外は秋の風だった。日中に木綿の長袖シャツを着ると、日差しを受けぬぶんだけ腕が涼しい。
仕事に出かけるまで実家で高校野球を見ていた。駒大苫小牧と東海大甲府の試合。
右のサイドスローの選手がピッチング練習をしていて、これから投げるというときに僕のほうがタイムアップ。
彼の変則投げが、甲子園の準決勝でどのくらい通用するのか見られなかったのが心残り。

オリンピックは柔道がメダルラッシュだというが、当然であろう。
むしろ、外国人選手があんなにも対戦相手になってくれていて感謝すべきだ。
妙な民族衣装で襟の掴み合いと倒し合いで勝敗がつくのである。
きっと国では酔狂な奴だと思われてるだろう。
とはいっても、投げ技がきれいに決まると気分がよろしい。

一部で話題の「くいちんマスター」。
僕の想定している幾つかの仮説をここで述べておこう。

仮説:イ
くいちん亭という、土地で有名な飲み屋がある。地酒のおいしい「くいちん亭」のマスターは、
当年55歳。人生の酸いも甘いも乗り越えて、今は若い奥様と居酒屋を切り盛りされている。
若い選手との間では、人生相談にも似た世間話で連日賑わうのである。

仮説:ロ
秋田の方言で、杭珍はとても珍しい大株のまいたけのことを指す。
彼女のおじいさんが、地元でも評判のキノコ取りの名人で、
村ではくいちんを取る、一番えらい人の意味でマスターの称号を得ている。
おじいさんを尊敬しているというという説。

仮説:ハ
彼女の同僚でいるんです、そうゆう女性が。
結婚はいつも玉の輿で、いまの旦那は三回目で、ネット関連会社の社長。
三人の子供も幸せに育ち、彼女の仲間内ではあいつは「くいちん」だよ、
マスターだよとひっそりささやかれている。
そんな彼女の自由奔放な生き方をみならおうと、「くいちんマスター」を
尊敬していますと書いた、とする説。

たぶん、どれも違うと思う。