振武寮

何らかの要因により攻撃に至らずに基地に帰還した特攻隊員が収監された施設である。
NHKのETV特集より。不時着した特攻隊はどうするのか?田舎なら匿ってもらえそうだけど、部隊に戻るのがスジなんだろうな。嫌だなと思うのは僕が戦後生まれだから。

以前立川航空隊に居た人と話したことがある。

そのおじいさんは立川周辺で作った飛行機を飛ばす仕事についていたという。大体南方に飛行機を届けると届く確率は3割ほどしか届かない。だから特攻隊の乗っていった飛行機だってマトモに飛ぶわけも無く、不時着して当たり前だろう。

ETV特集では97式がでていた。

当時主力だった零式は特攻に使うには惜しく、固定脚をもつ旧式の97式に250kg爆弾を積んで特攻に使ったらしい。とにかく末期には複座の偵察機やよくわからん輸送機でも突っ込んでいったわけだから、97式はまだましなほうだったのかもしれない。
振武寮を仕切っていた幕僚は、戦後80歳になるまで拳銃を携帯していたそうである。寮ででもどりの特攻隊員をあまりいじめすぎたから、復讐されるのを心配していたそうだ。
持っていたのはおそらく私物の銃だろう。戦前戦中は拳銃を市販していたし、将校用の正式ピストルは生産が追いつかず自前で準備した軍人が多かった。「平べったいブローニング」ならポケットに入れても目立つまい。

いい奴はみんな死んじまった(紅の豚)

なぜ死んでしまう奴ななぜ「いい奴」なのか。まずは特別攻撃隊の成立から考えてみよう。互角に戦えるなら、戦闘機とパイロットをいっぺんに失うような作戦は実行に移されない。負け戦だったのである。その負け戦に参加している人はとりあえず「気のいい人」である。

優秀な順に人が飛んだ。だからいい奴は先に死んでしまう。

大学のグライダー部上がりとか。人材育成に手間と時間がかかるため、優秀な人材に跳んでもらおうというのが当時の機運であったろう。優秀な順に前線に送られるので、たとえば僕みたいな軍人不適格者は最後の最後まで内地でグダグダしていたろう。自分の足の甲ぐらい打ち抜くかもしれない。すると残ったのはダメな人で死んじゃったのはいいひとばかりになる。
ETV特集でもちらと触れられていたが、たとえば海軍航空隊にはいるための予科練から順当に特攻隊になるのなら死に疑問を抱かない。年端もいかない、今で言えば中学生の子に「国のために死なねばならぬ」といえば納得しやすいだろう。他に生きる道がないのだから。
しかし当時すでに大学生になるような旧制高校上がりの人にいきなり特攻しろといっても納得しなかったろう。世の中の何たるかが分かってしまった彼らが自分の死に疑問を持って当然である。

合理主義に負ける

開戦当時のゼロ戦はアメリカのどの戦闘機より空中戦闘能力が高かった。そのうちアメリカさんは落ちたゼロ戦とばしてみたり、空戦で戦ったパイロットの証言から弱点を見つけてしまった。ひとつは「最高速不足」で、
いっぽう日本人は自分が優秀だから勝てる、神の子だもん理論に基づき合理主義とは別な論理で動いていた。空中格闘戦でゼロ戦が負けるのは、キモチが足りないからだ、といった理屈である。

零戦。米国の空に舞う

アメリカが丈夫な機体を開発した結果、以下のような状況になった。
5、6発食わせても米軍機は落ちない/日本は一発当たると炎上
アメリカはパイロットの練度が上がる/日本はパイロットが不足する 
米軍機は改良され空戦能力が上がる/日本軍機は重くなり能力劣化。練度の不足した新人パイロットに性能に劣る機体を与えても戦争には勝てない。