弓旋盤を作るよ

旋盤あれこれ

旋盤にはいくつか種類があります。

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足踏み式旋盤。棒を使った「竿旋盤」。片方の脚で踏んで回転物に掛けたヒモを上下させる。先日紹介しましたのロビン・ウッドの旋盤とか。

Natural/Wilderness living skills – Welcome to my Blog: Bow-lathe
一方こちらが弓旋盤。その名の通り棒に弓を掛けて回します。火起こしをするときに見かける方法です。時計屋さんも小物挽きに使ってます。

弓旋盤の使い方

弓に張った弦を軸に巻き付けて、片手で前後させてもう片手で鑿(ノミ)を当て削ります。大物を削るには足踏みの「竿旋盤」の方が頼もしいのですが、小物を作るならこちらの方が使い勝手は良さそうです。

手で回す旋盤

手動旋盤は検察してみましたがあんまり人気がありません。ハンド・ドリルが安く手に入る時代にわざわざ手動にする理由がありません。それでも私は弓旋盤が欲しい。こまかい作業も出来るし展開面積が狭くて済むでしょう。

私が欲しいのは、こういう簡単な素材と工夫で出来て最大限の効果が得られるものです。価格の高いもの高級な仕事ができても当たり前。国産の卓上電動旋盤は三万円くらいから。あまりに安い物ですと、柔らかい木であるとか、二センチの角材が回らないとか不都合がでてきます。

どうして安くて簡易な旋盤がすくないのか

安全性の問題が大きいです。コード式のドリルのチャックを利用して材木を回した場合、一般的な建材であれば5センチ角でも回せますが、チゼルで切削するときに、刃を当てた瞬間、角材の回転は確実に止ります。

昔からローテク礼賛なので、もうすこし考証します。

以前、簡易版のホームセンターで1万円くらいで買えるクランプ式の旋盤を使ったことがあります。回転のトルクの問題が大きく、使用するドリルのモーターの性能に左右されます。たとえば充電式のドライバードリルではまず2センチ角のバルサ材だって削れないかも。

とにかくハイパワーでトルクの大きなコード式ドリルが必須です。試しに安価な木工旋盤にドリルを付けてみますと、今度はうまく芯出しをしないと回転がぶれてどうにもなりません。

回転体や移動物体は速度の二乗で仕事率がアップしますけれど、パワーと速度が原因で怪我の恐れがでてきます。そうなったとき、安っぽい旋盤を使って怪我をするくらいなら最初から旋盤の回転で作業しないという選択肢がでてきます。

丁寧に木を削るほうが良いこともあるよ

箱組かH型なりコの字にツーバイフォー材を組んで、ヤスリで先端を尖らせたボルトを2本つかって角材の両端から締付けます。その状態である程度回転させるけれど、それは作図がしやすいからであって、削るときは外して小刀で彫り進めた方が早いかもしれません。

ある程度角がとれたところまできたら、もういちど自作の旋盤に面取り済みの角材を設置して、そのとき初めて紐をかけたり弓でまわすとよいとおもいます。最終的な微調整や、仕上げは回転指せたほうが楽だとおもいます。

戦略的撤退

たとえば手動旋盤でゼロからこけしをつくろうとおもうと、結構大変で音も大きいのである程度かたちにしてから作業したほうが良いと思います。

結局私は手工具でだいたいものもが作れてしまうので、内グリなど、本来は旋盤が必要な作業も彫刻刀ですませてしまいました。

思ったよりも高いトルクが必要

木の縦の木目に直角に刃をあててトルクでブン廻す工作もひとつの方法ですが、ホビーユースならばそこまで設備投資をせずとも良いのではないかと。もちろんCNCやルーターと組み合わせて削ってしまう方は、手工具の範疇からはみ出てしまいます。

回転板があったらいいなあと思いながら木工をしましたが、絶対に旋盤がなければ作れない物というものはありません。効率性を考えると電動の旋盤は圧倒的に楽です。ただ、旋盤はチャックをしっかり作らないと回転中や切削中にずれます。また、安い建材あたりは廻してもささくれだってしまいますので広葉樹の固めの材が必要となり、こだわればこだわるほど相手は手強くなります。

とりあえずのまとめ

このように、工作精度、回転時の安全性、強度などを考えていきますと家庭用の旋盤も金属用くらいちゃんとした値段のものを買わないと、椅子の脚ひとつけずることができません。

椅子の脚や二段別途の支柱を挽きものでつくろうとすると、観てなんとなく思った以上の設備投資がひつようとなります。装飾の必要性や工具の組み合わせで回転させずに作れないかどうか、また外注できないか考えてみましょう。

木工の工場で使っている機械類を見せてもらう限り、素人が簡単に手に入れられるものではなく恒常的に使うつもりがないのであれば木工旋盤の導入は後回しで考えた方がよいかと思います。

アフリカの旋盤

Stuart King » folk art
リンク先一番下の写真に注目。北アフリカの職人が足と手と全身を使って挽き物をしています。土台は木の板を組み合わせた箱状の台で床に設置。土台の固定が完璧で、作業中にのブレが少なくなります。

弓旋盤」なら、多少固いものでもノミを足で押さえれば削れるでしょう。作例を見ると、弓とする棒は実はまっすぐです。これは押すときの力がかかりやすくなることを狙ったのか。ヒモが長いのは切るのが面倒と言うより随時交換調整が必要になるからの処置か。

この手の装置は馴れるまで扱うのは大変でしょう。でも、作るのは簡単ですし、とてもよく考えられた装置に見えます。

ベンチ一体型弓旋盤
こちらは動画に出てくる装置の全体像。ベンチと一体型の弓旋盤。アイディアはそのままいただきたい。

A Bodger’s Blog: Bow lathe
北アフリカ方式。床置きの弓旋盤。これをみると、構造が簡単だからって作業効率が悪いわけではなく、構造が簡単になればなるほど挽くものが大量になっていくのが不思議。

旋盤の歴史

ローマ帝国のころから活躍。今まで、足で踏む「竿旋盤」を作ろうと思っていました。台になる頑丈な鋼鉄製のテーブルが1個ありますし、「しなる枝」を固定する剥きだしの柱もあります。だから足踏み式を作るのが当たり前と考えておりました。

しかし、いざ作る段になってみると、「足踏み式」の「竿旋盤」は結構な大がかりです。材木の組み合わせもツーバイフォーか、4×5センチほどの角材でないと強度が出ません。うちは電動丸鋸がありませんので、角材も太くなると切るのが大変です。

小さいことは良いことだ

私が今作りたいものはちょっとした引き出しのつまみとか、せいぜい3センチくらいの小物ばかりです。机の脚にを削るとはおもえません。そんな大物は作りません。それなら弓旋盤だろうと。

仕事は簡単な構造の機械で簡単に進めた方が効率がよいのかも知れません。