無意識工作

故人になって随分久しい山本夏彦翁は、どの原稿を書いても1/3に削った。

折角書いたのにもったいないなぁと思っていたけれど、いまは自分も削ってます。
キー入力で沢山書けるようになったからというのもあります。
あと、美文家ではないので削らないと通じないことも理解しました。

浮き世のことは笑うよりほかなし
1/3の話がどの本なのかは忘れた。

ものを書いたり作ったりするのは労力が必要です。
どのくらい必要なのかといえば、たぶん書く行為の4倍くらいではなかろうか。

自分でカメラ安定装置を作るまでを振り返ってみると、手元にノート一冊分ほどの廃案があります。
作らなかったモデルは台数にすると何台だろう?
作らなかった案の絵があり、どうして作らなかったのかが文章で書いてあります。
延々に折りたたみ機能が作れなくてそのままになっています。

私の場合どうも言葉で考えているので、文章が沢山。

自作カメラ安定装置
自作カメラ安定装置

それで、この画像のAL-03を作るときは実は設計図も素案の図も書きませんでした。

即興でつくった。

チューブベンダーが届いて「わーい」となったその勢いで工作開始。

アームの角度に関しては、図を沢山書いていたので目分量であの曲がりです。
1.5ミリから3.0ミリまでのアルミ板を適材適所に配置するのも実は設計図無し。
アルミパイプと板を繋ぐPクランプのアイディアもカメラ台のアルミ板も実は
長さも測らず切断し組み合わせました。

私のアタマの中で、あの形は完成済みで。

実物にするのに使ったのは無意識に手を動かすこと。

工作時、アタマでは大して考えてません。

ゾーン – スポーツに人生を学ぼう!
スポーツ選手などが「ゾーン」というあれでしょうか。
手が勝手に動く感じです。

この感じはなかなか他人には説明しにくいのですが
言葉や絵にならない感覚を捉える練習をしておくと何とかなります。

随分昔、夏休みの宿題で読書感想文を書くときに、最初にこの感じと対峙したように記憶します。回りはみんな作文が書けないと言うけれど、私はアタマの中には書けないことが沢山あるなぁと思ってましたから「読書感想文」を書くのは苦痛になりませんでした。

なんでも検索でき、その気になれば短文メールの返信が1分以内に返ってくる現代は「無意識」と対峙する機会を減らします。それでどうなるかは知りませんけど、ある種の危うさを感じます。