写真とカメラどっちをとるの

わたくしが撮影した写真がパっとしないのはカメラの性能が悪いからだと信じていた。そんな時期がありました。

プロが使う、大きくて明るい大口径レンズう使うとうまくなるのだ!なんてね。

どうしてこんな勘違いをしたのでしょう?

自分のこととなるとわからなくなります。そこで、カメラと写真からいったん離れて、別の例を使って現象を腑分けしてみようと思います。

「運転が下手でクルマ好き」の方を俎上に上げてみます。

運転してますと、遭遇いたします、あの、クルマに凝るわりに運転がお粗末な人。そうあの人です。これをお読みになってるパワーウエイトレシオと流体力学と微分積分と物理の法則に明るい貴方ではないのでご安心ください。

運転とクルマは分けます。

●クルマはどれでも良くて、運転が好きな人

◆クルマを磨いているのが好きな人。

彼らは一緒くたにされがちです。

「運転」と「クルマ」は分けて考えましょう。

「写真」と「カメラ」も分けて考えるべきです。

クルマは買えますので、買って磨いてください。私は技術を磨きたい。

ではいったい、わたくしたちはどのように技術を身につければよいのでしょう。

まず考えられるのは経験値上げること。場数を踏むこと。撮影枚数か撮影回数を増やします。

問題となるのは、そのとき、カメラに気を取られていると写真に気が回らない点。運転が下手なクルマ好きの人はクルマに気を取られて運転がうまくならないに違いないのです。この、ものに気を取られて技術の習得がおぼつかない感覚を、わたくしはよく理解できます。なぜならわたくしも、道具に気を取られて使い方が手薄になる性質だからです。クルマ好きとはあまり仲良くしておりませんか、近親憎悪のようなもの。今思えば同類相憐れむのです。

カメラのことを考えては、常に新しいレンズを投入して撮影時にレンズに気を取られます。すると、構図やら他の要素が曖昧になります。これに気がついてからは、いいクルマを転がしてる運転が下手な人のことを、技術は未熟だけれど自分とは遠くない仲間と思うことにしました。

クルマ好きの未来はどうなるかわかりませんが、カメラ好きの未来はなんとなく予想が付きます。高いレンズを買って、最新カメラボディを揃えて、そして大したものは撮らないのです。カメラ好きが撮った写真を思い浮かべるかといえば、あまり思い出さない。どの程度必要なのかわからないけれど、技術が伴う写真でなければ写真は忘れ去られてしまいます。かといって、印象だけ強い写真も鑑賞に耐えるとは思えない。それなりのうまい写真、または鑑賞に耐える、見るものの邪魔をしない写真がうまい写真ではないか。

うまい写真をいくらか仮定した上で、はたしてうまい写真にどんなカメラが必要なのか逆算できます。写真の結果から必要な要素を引いてくると、私がふだん好んでつかうF2より明るい単焦点は別段必要ではなくて、操作性のよいカメラなら、マウントも素子サイズも、結果としての写真のためにはそれほど必要ないものに思えてしまいます。いちおうカメラの形をしていれば良い。極端に言えば、カメラでさえあればら良いのです。

できれば、操作性は欲しくて、カメラが手の延長のように無意識に使えたらそれが理想のカメラです。しかし、理想を追いすぎてもタダのカメラ好きですから、妥協点を低くします。

低めで妥協したカメラをとレンズの組み合わせをできるだけ変えないまま場数を踏みたいものです。

あるカメラマンはプライベート用のカメラは五万円以下とするルールを提唱されてます。

今年の春は28-75相当の標準ズームレンズを使うとこにします。古いボディ、半分ジャンクの標準ズームで価格は3万円くらいでした(要するにボロいのです)カメラをカメラと意識して、呪術性やら神格化を外すには、私の場合3万円がひとつの線で、たぶんそのくらいのセットでうまく撮れなければどのみち高いセットを持ってきても、うまい写真にはならないでしょう。カメラをきちんと撮っている人からすると、その線は10万円にするべきだとかイロイロ思うことはあるかもしれません。たしかに描画エンジンが古くて最新機の絵と違ってしまいますが、まあ、そんなものです。立派な写真をとるわけでもないし。

過去写真を見返して、ずっと単焦点50ミリ相当で頑張っていた努力の跡が見えました。努力はしたけれど結果が伴わない不思議。そう、下手なのです。下手な理由はいくつもありますが、構図があまい。現状これに尽きます。現状を打破するためにズームをつかことにします。

単焦点50ミリ相当は、慣れてしまうとそれなりに撮れますが、ただ、撮影しているときにわたくしは「このレンズはF1.8だから明るいのだ」なんて思って撮影してますので、どこか余分な自意識が働いています。その余計な要素を取り去った上で写真がどうなるのか、この春はすこし試してみようと思います。ズームだからうまくなるはず、ズームだからうまく撮れるはず(リフレイン) はっ?これでは元のカメラ機材好きではないか?

撮らねば。

仕事のことを考えると、遊んでいる余裕は無いのかもしれないけれど、そこまで仕事に身を捧げてませんからお花が咲いたら写真を撮ります。