年末はNHK教育でゼロ戦
年末のテレビがどれもつまらないので、K-1とプライドを見た。総合格闘技はルールがあいまいで、見ていて美しくない。しがみついたら試合は膠着し何より戦い方が汚い。試合をきれいに終わらせるには、武器を持たせといいかもしれない。日本刀対青龍刀とか。見たいとおもうのは俺だけか。
あきらめてNHK教育を見る。ゼロ戦の設計者が残したメモが日の目をみた。ゼロ戦とは、アルミモノコック構造で当時最先端だった技術をつぎ込んで最高の性能を誇った戦闘機である。海軍の艦載機として開発され、終戦まで戦った。当時の設計補佐だった人が残したメモをもとに、ゼロ戦の設計がどのようになされたのか、またその弱点が改善されずに残った謎を追っていった。
最新鋭機のゼロ戦は、試作段階で日中戦争に実験的に投入された。そこで勝利したから、ずっと勝てると思ったらしい。客観性の無いのはニホンジンの悪いところである。中国の複葉機に勝っていい気になったんだろう。ちょっと調子に乗せるとすぐに調子にのるのは悪いところだ。
単純に他人が無い人たちなのかもしれない。同じ村社会で生きてきて、海軍村の狭い世界の中で切磋琢磨してきたから、いざ外国と戦う羽目になっても自分たちの論理でしか動けないのだろう。偏差値を上げておけば一生いけると思ってしまった哀れな元受験生みたいなものか?
踏み潰す前に
ハンニバルが言ってたけど(当然スミス大佐ね)、ナメクジは踏み潰す前に一度大きさを確認せねばならない。戦う前に敵について知らなければ戦いようが無いのだ。だから、日本も真珠湾に行く前にむこうの工業力、資源力をよく見てから戦うべきであったろう。
パイロットについて
日本のパイロットはかなり早い段階で消耗してしまった。もともと優秀な順に最前線に送られる。NHKの番組でも装甲の違いを挙げていたが、ゼロ戦は無装甲で、アメリカのヘルキャットは重装甲である。たしか、燃料タンクはアルミとゴムの複合装甲で、万一貫通されても中のゴムがひしゃげて液漏れをさせない仕組みだったはず。一発食らうと落ちてしまう、着火剤みたいなゼロ戦とは大違いだ。
パイロットの養成には相当時間が掛かる。9.11テロの実行犯だって相当訓練したわけでしょ。タクシー運転手の補充は利くけどF1ドライバーの予備はなかなかいないわけですよ。格闘戦が前提の戦闘機乗りをひとり養成するのに、どのくらいの時間と金が掛かるか想像してほしい。いまでも、自家用機は飛行時間が200時間くらいないと仕事としては乗ってはいけないわけですし、まして戦闘機。
だから、無装甲のゼロ戦に乗っけて一回で殺してしまうと、養成した時間とカネが一瞬でなくなってしまう。機体込みで金額に換算したら、いくらになると思っているんだろうか。人の命云々で話を始めると長いから省くが、単純に戦闘機の空中戦闘操縦をサービスとして換算してみれば相当な額にならないだろうか?そんなベテラン優秀社員を遠隔地の支店でドロ舟に乗せて沈めてしまう日本海軍の気が知れない。
一方ヘルキャットに乗っている米兵は一度撃たれてもそう簡単には落ちない。何度でもやり直しが利く。だからどんなにへぼでも腕が上がるわけだ。一方日本軍は一度被弾したらおしまいだから、腕の良い順にいなくなり、あとから俄かに養成したパイロットが操縦桿を握る。予科練の年表を見ると、南方の戦線が拡大したころに卒業生の大半撃滅、終戦間際にかけては惨憺たる状況である。
海軍の現場をしらない偉い人は、「練習するからやわい機体でもいいよ」って嘯(うそぶ)いたが、もうその次点で戦局は下り坂。予科練生き残りの手記を読んでも目に見えてわかるくらい、腕の良いパイロットは散っている。会社で言うと逃げられる社員が辞めて、残り物がうようよしている状態に近いだろう。
特攻にいたっては正直よくわからない。中間期末が気に入らなかったから常磐線の特急に飛び込んで死んでしまうってことでしょ。俺は中間期末で死んじゃうから、お前は期末テストがんばれって残された方に言ってもさあ、そんな重いテストは受けられないよ。アメリカ人は参考書を買って期末テストで音楽聞きながら勉強してがんばる、みたいな気楽さなのに。
当時アメリカのパイロットは志願制で、大学から直接出向いてきた若いパイロットもいた。ベース基地があり、日本軍と戦ってベース基地に帰ってきて、戦闘報告など情報の共有がなされた。一方日本軍はベース基地を持たない。末端の兵士に作戦像がわからなくする機密が目的だったらしいが、ベースがないから、仲間がどのくらい。やられたか最後まで気がつかない仕組みである。
当時の旧制高校、大学にはグライダー部があった。これは急に必要になった戦闘機乗りを養成するためにつくったらしい。先の見越せない大学にIT学科を作るようなものか。双思うと今も昔もやってることは大差が無いのかもしれない。
さて、この勢いで沖縄戦の体験VTRを見ようと思ったが、これ以上見ると人間不信になるのでやめた。ちょうど友人が年越しイベントに行くというので外出した。外の寒空の下はしゃぐ人たちを見ながら、60年経っても一回戦争をしたら同じ過ちをするんだろうなとおもった。