泣きながら生きて

不法滞在の中国人とその家族を追ったドキュメンタリー。

シリーズの完結編。家族の10年を追った重厚な番組だった。父親は東京、娘はアメリカ、母は中国と国境を跨いで暮らしている。 離れ離れなのにあんなに家族らしい家族はない。

10年は短いようで長い。ちいさかった娘は成長して医者になる。スタッフロールには鬼籍に入った故人が名を連ねる。

兎に角お父さんがかっこいい。参った。

いくつか印象に残ったシーンを忘れる前に書いておこうと思う。

お母さんは娘に会いに渡米する。旅の前に洋服をあつらえる。親類にもらった生地でジャケットを作るんだけど、その生地はとても上等で仕立ても丁寧だった。試着したそれは「よそゆき」だった。

中国を出発してお母さんは経由地の日本に降り立つ。夫婦は13年ぶりに再会するんだけど、久しぶりに会えてうれしいんだけど、あんまりうれしすぎて感情が表現できなくて、笑いながら泣いてたのが悲しかった。

自分の立ち居地を一切合切わすれて「俺も結婚したい」と思ったね。

夫婦の別れも切なくて。娘はいつの間にか垢抜けて。お母さんに言わせると、お父さんは歯も抜けて髪も抜けてふけたらしいんだけど、それでもかっこよくて。

あのかっこよさは昭和のかっこよさで平成ではついに見かけなくなった。昭和も前のほうに存在した何かであろう。具体的にはなんだろう?お金がなくても学歴がなくても後ろ盾がなくて、頭に毛がなくても豊かなもの。

まっとうに生きようとする気構えだろうか。

その気構えの元になるのはなんだろう。

「こころ」か。

日本は豊かになりすぎた。人間としてもまっとうさよりも土地を転がしてベンツを転がす人間が人間として上だと思い始めた。そこに「こころ」はない。あったのは金だ。「バブル崩壊」で一度は去ったかに見えたこの風潮も、「失われた10年」が過ぎてまたぶり返し、モデル女をはべらせた若造が「金で買えないものはない」と言い放つ。

もう、うんざりだ。

私は少なくともそこからは下りようと思う。そして、どこかであのお父さんにあっても、顔を上げて「こんにちわ」といえる人でありたい。出来るかどうかわからないけど。





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