コンビニの傘を折った日

井上陽水は傘がないと嘆いた。私は傘があるのに嘆いた。

中国製の安っぽい傘をさしたのです。

直径がちいさい。子供用か。雨のしずくが落ちないように畳んで降ったら、手元のロック部分で折れた。

傘の軸は巻きパイプで出来ており、ひらくときに押すツメを突き出すためパイプに隙間が開いている。パイプに切り欠きを付ければ当然弱くなる。折れた軸の破断面を指で触ると使っている鉄が驚くほど柔らかい。カッターナイフで切れるのではないか。放射状にひらく傘の骨もなんだか柔らかい鉄。

通常、折れないための強度から逆算してパイプの直径を決めます。切り欠きを入れても折れないために、安全率を考慮に入れてパイプの肉圧を足したり、パイプ径を太くします。

どうしてコンビニの傘は折れるのでしょう。傘にはこれといった安全基準はございません。コンビニにならんでいる300円で買える雨傘の材料費用は100円くらいのもの。そのため加工が簡単な柔らかい鉄が好まれるのです。

国産の傘は使用者が雨に濡れないことが最大の目標。

反対に中国製のビニール傘は、雨が降ったときに手にとってもらうことが第一。

結果に重きを置くか商行為を重視するか。

水をきっただけで持ち手の上から折れてしまう傘をみて、買った私が悪いと反省しても良いのだけれど、ふつうはあのコンビニ傘の形をしたゴミを売りやがってと考えるし、売ったさきのお店から輸入業者、作っている国の女工さんも含めて嫌いになってしまうかもしれない。