台風が近づいてきた。
大洗の波が高くなる。高い波は沖でしか割れない。サーファーは沖を目指すが生半可な泳力ではたどり着かない。
随分昔に台風が遠くにあるとき海水浴場で泳いでいた。波は浅い場所でも強い。ためしに泳いで乗ってみるとパワーだけはあった。ただ綺麗な割れ方をしてくれないのであまり楽しめない。
しばらくあそんでいるあいだに波は段々強くなり、私たちは海からあがってしまった。
すると、遠くの方からロングボードに乗った青年がやってきた。中肉中背だが均整の取れた身体が海での経験を物語っていた。
彼が波に乗る場面を見ていない。手前に高い波があるから見えないのだ。
どれだけ沖に出れば乗れるのだろう?
沖に出る人はひたすら遠くに出る。
また別の日。台風でも何でもないとき。
たまたま海の見える食堂で外を見ていると、沖に人カゲが見えたことがある。日立の崖の上から見下ろしていたから正しい距離は分からない。1キロではきかないと思う。
太平洋ひとりぼっちだ、恐くないのだろうかと心配になった。
ただ、あれだけ遠くまで出てしまうと相当な大波でも無い限り乗れないから、あんまり楽しくないだろう。