ビデオカメラスタビライザーの仕様について

バランスを取り歩いても揺れない構造にし、揺れないように微調整して使います。こういうものは作る労力はたいして必要ありません。代わりに設計と試作と試験とフィードバックに労力を取られます。実験と試験を繰り返した結果、ようやく満足に機能するものができたときには

「どうしてこんなものをつくっていたのだろ?」

最初の目的が分からなくなってしまいました。ただ、目的はどうあれ、オートクチュールのステディカムが手元にあるので、面白半分に遊べます。これがちゃんとした機材だったらふざけたことに使えませんから、投げたり自転車の籠に放り込んだり、持ったまま堤防から飛びおりたりできなかったでしょう。

いまようやく、映画の文法のようなものと画面作りが分かりかけるところまできました。分かっただけでは足りなくて、実演して初めて分かったことになるのでまだ先が長いです。

作ったカメラスタビライザーの機能としての目的は画面を揺らさないことで、揺らさないためにどんな機能をカメラに取り付けるかは、実験した結果をフィードバックしてデザインしています。だから、メカとしては公開している写真と説明文がすべてです。

tubebender |Making Camera Stabilizer

どこにどんな機能があって何のためにそうしたのかは私しか知りません。だから、公開してるものをそのまま真似しても意味が理解できてないと、機能しないかも。前回のmake meeting tokyo 07のときには販売用にマーリンふうな物をいくつか作ろうかなと思ってたのですが、時間がないを理由にして作りませんでした。実際、準備期間がなくて作れなかったのですが、買ってもらっても使えないだろうなあという不安が常にありました。

どのくらい難しいのか分からなくなってしまいましたが、たしかに調整が難しい。作った私は調整方法込で理解していますがお客さんに渡して調整して使いこなせるかはまったくの未知数でした。説明しても使えるようにならないものを、あえて作る勇気がありませんでした。

カメラスタビライザーを使う人を、使える状態まで持っていくことが重要で、ものだけ持っていても無免許の高校生に車のキーを渡したことになるので不十分なんです。だから、講習なり教習が必要で、そこに自身がまったくなかったので販売しませんでした。いまも、そこを教え切る自身がありません。